著作者って誰?①
- namura-law
- 2022年12月7日
- 読了時間: 5分
更新日:2023年7月31日
この話の登場人物
T弁護士

来人(らいと)君
かつてN弁護士の個人情報保護法のクラスで講義を受け、
近頃、マーケティングや広告のコンサル事業を起業。

T先生、はじめまして。らいと と申します。

はじめまして、らいと君。今日は、著作権に関する相談があると聞いています。

はい。T先生が著作権のことなら何でも「タダ」で教えてくれるという 噂を聞きました。

誰がそんな噂を・・・。何でも「タダ」ではありませんが、今回はN弁護士の元教え子ということで、らいと君の相談に乗りましょう。

僕が立ち上げた事業にあたり、著作権に関して質問があります。

たしか、マーケティングの事業を立ち上げたんでしたっけ?

そうなんです!

せっかくなので、事業の内容を簡単にご紹介してもらえますか?

喜んで!まず、T先生もよくご存知のとおり、今後はウェブ3.0といわれるブロックチェーンを用いた分散型のインターネットが主流となっていきます。
従来の巨大Tech企業に集中していたテクノロジーと管理権限を・・・(中略)・・・・わけなんです!そこで、当社は、ユーザーも参加できるマーケティングとして・・・(中略)・・・今から申し上げる7つの理念に従って事業を進めていきます。まず1つ目は、・・・・(中略)・・・・(中略)・・・・。次に2つ目として、・・・・(中略)・・・・(中略)・・・・。

(うっ、長い・・・)

・・・・(中略)・・・・(中略)・・・・。今申し上げた7つの理念を体現するものとして、当社としては今から申し上げる9つの成長戦略と15個の達成目標を・・・。

あの、らいと君、御社の事業については別の機会にゆっくり聞かせてもらうので、そろそろ相談内容に入りましょうか。

さすがT先生、1を聞いて10を知ったわけですね。

そうですそうです。で、ご質問はなんですか?

今後の事業にあたり、企業ロゴやフライヤーのデザイン制作を進めていく予定です。アルバイト社員を使うことや、外部業者への委託も検討しています。社員や外部業者に制作をお願いした場合、誰がデザインの著作権を持つことになるんでしょうか?

まず原則として、著作物に関する権利は、当該著作物を創作した著作者が持つことになります。

じゃあ、共同で作業をした場合にはどうなるんですか?今の構想では、僕がアイディアを出して、美大のデザイン科にいる友人へ具体的なデザインの制作作業をお願いしようかな、と考えていました。僕がデザインの著作者ってことで大丈夫ですか?

大丈夫じゃありませんね。アイディアを出したり、アドバイスをしたりするだけでは、著作者にはなれないと理解してもらって良いです。

なんと。

著作権で保護されるのは「具体的な表現」であり、その背景にあるアイディアではありません。そのため、「具体的な表現」をした人が著作者になります。今のお話を前提にすると、デザイン科のご友人が著作者ですね。

マジかぁ・・・。ロゴのデザインの著作権は譲れないって思ってるんです。そうすると、僕が一からデザインを勉強しなきゃダメってことですね・・・。

いえいえ、そこまで遠回りしなくても大丈夫ですよ。著作者が持っている著作権は、契約によって移転することができるんです。

そうか。例えば僕が著作権を譲り受けるなら、著作者との契約で、「著作権は全部らいとへ譲渡する」って定めておけばいいんですね。

本当に全部譲渡しようと思えば、「著作権は全部らいとへ譲渡する(著作権法27条と28条に定める権利を含む)」と書く必要があります。

27条と28条?

翻案権等(27条)と二次的著作物の利用に関する権利(28条)。詳しくは「著作権って何③」(支分権)を読んでください。

どうして27条と28条は、わざわざ別に書いておく必要があるんですか?

著作権を譲渡する人の保護のためです。著作権は譲渡したけど、作品を勝手に変えられることまでは承諾してなかった、ってケースもあるので。

ややこしいなあ。

27条や28条の各権利の特掲の必要性についてやや議論があるところですが、とにかく27条と28条は別に書いておく必要があるってことは忘れると大変です。気合で覚えてください。気合です。

突然の根性論・・・。

著作権の譲渡にあたっては、著作者が持っている著作者人格権についても手当が必要です。

「著作者人格権も全部らいとへ譲渡する」って書けばいいんですね。

いいえ。著作者人格権は一身専属的な権利なので、他人に譲渡できません。さて、契約でどう規定すれば良いでしょうか?

なんだろう?ああ、「あなたには人格は認めません」って書くのですね?

らいとくん、あなた著作権より先に、人間としてもっと大事なことを学ぶ必要があるのでは・・。

・・・ショック。

ともかく、著作者人格権については、「著作者は著作者人格権を行使しません」という規定を置くことが多いです。

なるほど。なんだか著作者にとって気の毒にも思えますね。

もちろん契約なので、譲渡の対価の金額で調整することもできますし、著作者人格権の不行使とは違う規定にすることもできます。例えば、高名な小説の作家さんとの契約では、「著作者の著作者人格権を尊重する」という規定も見かけます。

パワーバランスによるのですね。

著作者の方とよく話し合って、共通認識をもっておくことが重要ですね。

ところで、企業ロゴのデザインは専門家にお任せしようと思うんですが、名刺やフライヤーについては僕も一緒にデザインを考えたいんです。複数人で一緒にデザインの表現を作ったときはどうなるのですか?

その場合は、「共同著作物」になります。複数の著作者で著作権を共有することになります。

そんなこともできるんですね。

しかし、著作権を共有していると、全員の合意がなければ権利行使ができないなど、不便な点があるんですよ。一緒にデザインする場合も、やはり相手方から著作権の譲渡を受けておくということを検討してください。

覚えておきます。

また、らいと君の事業にあたり、従業員に指示してデザイン制作してもらったような場合には、実際にデザインを制作した従業員ではなく、雇い主であるらいと君や会社が著作権を取得することがあります。これを「職務著作」といいます。

それ良いですね。早く教えてください。

職務著作にあたるには色々と要件がありますので、次回にご説明します。

次回もお願いします!
(2022年12月7日公開)
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