top of page

商標って何?①

この話の登場人物


   N弁護士

       来人(らいと)君

かつてN弁護士の個人情報保護法のクラスで講義を受け、

近頃、マーケティングや広告のコンサル事業を起業。 



 



らいとさんお久しぶり。卒業以来ご無沙汰だったけど、転職したんだって?






N先生、こちらこそお久しぶりです。先生から情報セキュリティの講座で個人情報保護法を教わってから3年経ちます。あの頃からいろいろ考えてたんですが、仲間たちと思い切って、マーケティングを主に扱う、会社を立ち上げたんで、元教え子ってことで、厚かましく先生に知的財産法について教えてもらおうと思ってお邪魔しに来たんですよ。お花なんか飾って、事務所おしゃれにしてるんですね!



法律事務所って堅いイメージでしょう。少し優しい感じが欲しくて、季節ごとにお花変えて飾ってるんですよ。ところで、マーケティングの会社、今日は、マーケティングに使う技術について何か知りたいの?それとも何か関係する商品について?





マーケティングや宣伝方法についてコンサルティングをする会社なんで、いろんな商品の名前や、キャッチーなフレーズなんかもどう使ったらいいか、AIの技術なども駆使してアドバイスするんです。






聞きたいのはAIのこと?







いえ、その中で、ご相談にいらっしゃる会社から、これは商標取ってて、これは商標とってなくってって、「商標」っていう言葉が飛び交うんです。イメージとしてはわかってるんだけど、法律には、どんなふうに書いてあるのか、どういう風に扱われているのか、知りたいんです。具体的な法律相談じゃないので、元教え子へのアドバイスってことで、無料でお願いしたいんですが・・・。先生ならわかりやすく教えてくれるかと。



相変わらず、うまく人を使うわね。いいですよ。でも商標って、実は結構哲学的で、難しいのよ~。抽象的な言葉を具体化して、頭の中で想像力を働かせることが重要。0101のデジタルの世界ではないので、ついてこれるかな?なんて脅かしてちゃいけないね。まず、「商標」って法律でどう書いてあるかな?





会社作るってきめてから、結構法律条文、会社法とかアクセスしてるんで、ちょっと待ってください。E-Govの商標法・・・。えっと第2条に「商標とは」って書いてありますが、長いんで、最初だけ。そのまえに、この商標法だけじゃなくて、法律の条文って第二条のあとすぐ、中身が書いてあって、何行かあとで2って算用数字が書いてありますね。1がないですが、なんでなんですか?





私もなぜかはわからないけれど、2ってあるのは、2項って意味で、第二条から2までは、1項の意味なの。

1項には、


 

『この法律で「商標」とは、人の知覚によつて認識することができるもののうち、文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合、音その他政令で定めるもの(以下「標章」という。)であつて、次に掲げるものをいう。

一 業として商品を生産し、証明し、又は譲渡する者がその商品について使用をするもの

二 業として役務を提供し、又は証明する者がその役務について使用をするもの(前号に掲げるものを除く。)』

 

と書いてあるわね。今日は、この商標の定義からお話しして、商標って何?という基礎を考えてみましょう。今度は会社のほかの方も連れてくるといいよ。みんなで理解しておく必要があるからね。






ってことはまた講義を聞きに来ていいってことですね。ラッキー!







さあ、難しいところ、説明するわよ。まず、「人の知覚によって認識することができるもの」ってありますよね。人の知覚ってどんなものがありますか?







多分シックスセンスはここでは含まれないと思うので、五感!視覚、聴覚、嗅覚、触覚、味覚だと思います。








そうですね。残念ながら、第6感だけじゃなく、嗅覚、触覚、味覚に訴える標章というのはまだ商標としては認められていないの。






なんだ、じゃあ、視覚と聴覚って書けばいいのにね。








視覚に訴える、「文字、図形、記号、立体的形状若しくは色彩又はこれらの結合」と聴覚に訴える「音」が現在登録できる商標の種類だけだけど、技術の進歩で、たとえばにおいなども商標になるかもしれないわよ。そのために、「その他政令で定めるもの」というのを加えて、種類を増やしやすくされています。





立体?3次元ですよね。なんか思っている商標のイメージと違うんだけど。





でも人間の目は、3次元って認識できるでしょ!確かに、この立体、色、音などはまだ新しくて、やっと認められるようになりました。忘れないうちに、この条文に出てくる「標章」っていうのは、商標権がみとめられているどうかではなく、その記号や文字、それ自体を指す言葉です。よく出てくるから覚えておいてね。

立体商標で有名な話としては、コカ・コーラのボトルの形があります。Coca colaと書いていないボトルでもコカ・コーラの瓶だと認識できるのかが争点となって裁判にまでなったけれど、最終的には認められて、商標登録ができました。



音商標の第1号は、TVコマーシャルでおなじみの「ヒサミツ」という言葉と組み合わされた音だそうです。もちろん音だけの商標もありますよ。「タッタカタッタ、タッタカタッタ、タッタタッタター」ってラッパの音もそうですね。







先生の歌い方だとなんのことかわかりません。








えっ、音取れてない?言いたかったのは 、大幸薬品の正露丸の商品の商標です。今はカラオケ行きにくいからなあ~。そのうち喉、鍛えなおしておくね。でもDAMの精密採点で87点が最高だから、この程度で許して。ちなみにこのDAMも第一興商さんの登録商標よ。特許庁のウェブサイトにいろいろ載っているので後で検索してみて。色については、色だけの商標については、トンボ鉛筆の消しゴムの青、白、黒の色の組み合わせや、セブンイレブンのオレンジ、白、緑、白、赤といったものがあります。




ふうん、先生のいう、コカ・コーラの文字がなくてもコカ・コーラのボトルってわからないとだめっていうのは、どういう意味なんですか?これからこのボトル使おうっていうときには、このボトルが●●の商品に使われてるなんて、わからなくて当り前じゃないですか?でも確か、ほかの人より先に申請しないと登録してもらえないんでしょう?






よく気が付きましたね。そうなの、特許などとは違って、商標は、使い初めに商標登録をしても、簡単には認めてもらえないんですよね。文字商標はともかく、ロゴや、立体、色、音など、それだけでその標章が何を示しているかがわからないものは、ある程度、商品やサービス、法律上は役務って書いてありますが、それらとのつながりが、見る側、聞く側に認知されていないと、登録はしてもらえないのよ。




そういうときは誰も登録できないってことですか?う~ん、なぜ最初に先生が、脅かすって言ったかわかってきたような・・・。商標って何?って難しいんですね。なんかマークの話って思ってたけど、




ふふふ。そうでしょう。じゃあちょっと頭がわいたところで。今日はここまでにしようか。ほかの会社の人たちにも教えてあげたいから、来週同じ曜日の同じ時間に事務所に来れるかな?







万難を排してまいります!





(2022年10月24日公開)


Comments


bottom of page