この話の登場人物
N弁護士
来人(らいと)君
かつてN弁護士の個人情報保護法のクラスで講義を受け、
近頃、マーケティングや広告のコンサル事業を起業。
おお、みんな揃ってるなあ、素晴らしい。この後どんなイベント企画したの?
それは、まあ、若い人しか楽しくないっていうか、その先生にはつまん ないんじゃないかと・・・。
つまり一緒に行くなってことね。って拗ねてないで、ちゃんとお話ししましょうね。大丈夫、私はこの間行ったJulieのコンサートで元気いっぱいもらったから、張り切って講義?するわよ。
先生としょうこさんのお話し読んで、Julieの動画続けていっぱい見ました。めっちゃかっこいいですね。
でしょっ、どの時代もかっこよくて、ソロはもう、もちろん、ザ・タイガースの頃も、1971年の解散コンサートも2013年の復活コンサートも涙なくして見れないのよ。って。あなたが振ってどうするの。止まんなくなるよ。皆さんもいらっしゃることなので、真面目にお話しします。今日は、「商標的使用」ってなあにというお話でしたね。皆さんは、どんなご意見?
前回先生から次はって言われてみんなで、ちょっと話してたんです。で、僕らが思うに、これは、商標の機能、①出所表示機能、②品質保証機能、③宣伝効果機能、のどれかにかかわるような使い方でなければな らないってことじゃないかと。
おおお、さすが3人寄れば文殊の知恵!ってわかる?なかなかことわざが通じないのよ。
みんなで考えればいい知恵が浮かぶ、それはまるで、知恵をつかさどる 文殊菩薩のようだってことでしょ!
よ~くわかってるねえ。素晴らしい、では今日の講義はこの辺で終わって。
それじゃ、次のイベントまで時間がもちませ~ん。
そうだったわね。基本的な考えはおっしゃるとおり、商標の機能に関連した使われ方がされているのが、商標的使用なの。でも、はしょっちゃおうと思ったわけではないのよ。商標的使用に当たるかは、結構争われています。令和に入ってからでも10件以上の裁判例がありますよ。
そうなんですね。だから簡単じゃないんだ。
商標を示して、この商品をいくらで売りますって、その販売を許可されている人が使うことは、商標的使用の基本のようなものですが、そのためには、商標権者の許諾が必要です。でも普通、販売代理店契約などという、商標権者兼製造者という人と、販売する人の間には契約(一般には販売代理店契約)が結ばれていて、このような形で商標を使っていいって定めがなされています。実店舗だと、ポップとか折込チラシにも書いて言いよってね。
ロイヤルティ払うんですよね!
しょうこさんとの私の話も読み込んでるねえ。さすが。でも、そんなものも含めて商品代金を決めているから、その限りであれば、ただで使っていいって書いてあります。
なあんだ、ロイヤルティって言って、いいとこ見せようと思ったんだけ ど。
そういう風に自分で調べて考えることが大事!とてもいい話よ。そう、商標的使用の話の前に、この間しょうこさんと話してから、Julieって商標登録されているか調べたの、一定の種類のものには、ちゃんと沢田研二さんの管理会社が商標登録をされていました。よかったあ。
またここに話が戻ってきた~。
そういわずに聞いて。あなたたちのお仕事にも関係してきます。今、沢田研二さんっていいましたね。このお名前、ご本名なので、商標登録は認められていません。でも例えば、ファッション業界って、結構デザイナーご本人の名前が、ブランドになっていたりしますよね。イブサンローランとか、カネコイサオとか。
僕らには縁遠い高そうなブランドですけど。
人の名前って、人格を表す大きな要素だから、財産権として考えるのはどうかってことから、認められてこなかったんだけど、欧米や韓国では認められていて、日本でも改正で認めるべきという動きが進んでいます。今年中にも改正される可能性があるので、特にファッション業界のお客様には、お伝えしておいてね。改正を見越して登録の準備をしておく必要があります。
重要な点ですね。ありがとうございます。
さて、商標的使用の話に戻りましょう。有名なポパイ事件の話をすべきなんだけど、この事件「POPEYE」と「ポパイ」という商標権があったのに、その使用許諾を得てない人が、Tシャツの真ん中に大きなポパイの絵とこれらの商標を書いて、製造販売した被告を訴えた事件で、これは商標的使用でないとされたんです(大阪地裁昭和51年2月24日)。
えっ、だれだって承諾もらって、もしくは商標権持っている人が作って売ってるって思うんじゃないの?先生の言ってた、出所表示機能がある じゃないですか?
そうよね。ポパイって漫画のキャラクターで、こっちが主体だって裁判所は考えたようです。でもこの事件を参考にして、少々使っても大丈夫なんて絶対にお客様には言わないでね。私としてはとても特殊な事件だと思っています。
裁判があると余計わからなくなるっていうのは勘弁してほしいです~。
でもね、実をいうと商標的使用とみとめられなかった事件は、かなりの数あるんです。ノベルティに商標つけても、その事件では、ノベルティって無料だからって、商標的使用じゃないってされたし、テイクアウトの商品は、場合によっては商標的使用じゃないって言われるし、レコードのアルバムジャケットのタイトル名の使用も、商標的使用じゃないってされたし、「タカラ本みりん入り○○」っていうのは「タカラ」の商標的使用じゃないってされたの。
じゃあ、僕が仲間と作ってるバンドで、自主製作アルバムに「Julie」ってつけてもいいいってことですか?沢田研二さんのファンとか間違って 買ってくれそう・・・。
そんな恐ろしいこと言わないでよ。さっき言った、レコードのアルバムのタイトルは、井上陽水さんのアルバムに関する件だったんだけれど、裁判例は、様々な要素を勘案して判断されるから、そんな危ない企画はしないでね。場合によっては、不正競争防止法の問題になるかもしれません。沢田研二さんのレコードアルバムにはJulie 1とか、Julie 4 (私の大好きなアルバムなの)があるから。
いえ、僕は単に質問してみただけで、ぼくもJulieって呼び捨てでいいの
かな、動画見てリスペクトしていますから、そんなことはいたしませ ん。安心してください。
そうじゃないとなんのためにこの話をしてるのかわからなくなるものね。ただ、それくらい、商標的使用というのが何かは難しい問題です。
なんかクライアントのみなさんに、商標頑張って取得してくださいっていいにくくなってきたなあ。
管理料も必要だしね。ただ、何か侵害的なことがあったときに、なんと言っても登録されていないと、争うことがとても難しくなります。さっき話にでた不正競争防止法の周知表示(同法2条1項1号)や著名表示(同2号)で戦うのは、もっともっと大変だから。私は勝った事件と、和解した事件しか担当してないけれど、大変だったねえ。アンケート取ったりして、「知ってますか?」て聞いたりするんです。
先生、一緒にお話しされると、余計わからなくなります。
そうね。似たところもあるので、ついつい、話してしまいましたが、また別の時にしっかり要件論からお話しましょう。次回は、商標的な使用方法だと認められても、まだハードルがあるって話をしましょう。本当に侵害があるのか、ちょっと変えてあったらどうなのか、っていう類似性の話です。
それも難しいんですか?
そのあと楽しいイベントが必要なくらいにはね。
(2022年12月16日公開)
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